ブレインエコノミー時代の不動産価値|WELL認証に学ぶウェルビーイングの経済効果

2025年12月16日

ブレインエコノミー時代の不動産価値|WELL認証に学ぶウェルビーイングの経済効果

 

日本の成長戦略の中で、いま静かに、しかし確実に存在感を増しているキーワードがあります。それが「ニューロダイバーシティ」です。経済産業省は、ADHDや学習障害といった脳や神経の特性の違いを欠如ではなく多様性として捉え、それを活かすことが企業競争力や生産性向上につながると明言しています。[1]

また、世界的にも脳の健康によりもたらされる経済効果「ブレインキャピタル」を守り、その集合体がもたらす経済成長「ブレインエコノミー」を支える土台づくりへの動きが着々と進んでいます。[2

政策、企業の人材戦略が、人間の脳を軸にシフトしていく中、これからの不動産価値はどのように再定義されるのでしょうか。

 

脳の疲弊が生む経済リスク

世界では、うつ病や不安障害を含む脳関連の健康問題が、年間で約5兆ドルもの経済損失を生み出していると推計されています。さらに2030年には、その規模が16兆ドルに達する可能性も指摘されています。これらは医療費だけでなく、生産性低下、欠勤、離職といった「見えにくい損失」を含んだ数字です。 [3]

脳の疲弊による経済損失の要因の多くは、集中を妨げる物理的環境による業務効率の低下や、働き過ぎ、慢性的なストレスといった空間設計と働き方が複合的に影響する環境要因、つまり「働く場所」が脳に与える負荷の蓄積でもあります。

ウェルビーイングはコストではなく、経営インフラ

一方で、脳と健康に配慮した環境がもたらすリターンも、徐々に数値として可視化されてきています。世界経済フォーラムは、従業員のウェルビーイングを向上させることで、世界全体で最大11.7兆ドル相当の経済価値が創出される可能性があると示しています 。[4]

健康への投資は、もはや福利厚生ではなく、企業競争力を支える経営インフラであり、その受け皿となる不動産の役割は決定的に変わりつつあります。

 

WELL認証が示す「人中心」の不動産価値

WELL Building Standardは、建物の環境性能を「人の健康とウェルビーイング」という観点から総合的に評価する国際認証です。 省エネルギーや設備性能だけでなく、人がその空間でどのように感じ、働き、回復できるかを軸に、複数のカテゴリーで評価が行われます。

設備を用いて改善が可能な主な評価項目では、心身の健康との関係性がわかりやすい「運動」、「栄養」、「水」へのアクセスに加え、睡眠の質や日中のパフォーマンスに影響する「自然光の取り入れ方や照明計画)」や、集中力や認知機能、疲労感を左右する「空気換気性能や空気中の汚染物質の管理)」ほか、「熱環境」、「音環境」、さらには「資材」が上げられます。

そのほかには、「こころ(ストレス管理、メンタルヘルスへの配慮、リフレッシュできる空間の有無など)」といった心理的な回復力を支える仕組みに対する評価や、「コミュニティ」では、ニューロダイバーシティへの配慮も含め、多様性・公平性に対する組織や空間、運営のあり方が評価されます。

 WELL Building Standardはこれらの要素を総合的に捉え、空間が「人が最大限に力を発揮できる環境であるか」を評価します。グローバルな不動産研究では、健康・環境認証を取得したオフィスビルが、同条件の非認証物件と比べて、平均で6.3%の賃料プレミアムを実現していることが報告されており、特に健康要素を含む認証では、空室率が低く、テナントの定着期間が長い傾向も見られます。[5

 

ブレインエコノミー時代の不動産へ

人の脳が最大限に力を発揮できる環境は、企業の生産性を高めるだけでなく、人手不足が深刻化する時代において、人材確保の観点からも重要な競争力となります。さらに、ニューロダイバーシティの考え方が広く受け入れられるにつれ、企業ごとに求められるワークスペースのあり方は、今後ますます多様化していくでしょう。

その結果、企業がオフィスを選ぶ理由は、立地や賃料といった従来の条件に加え、環境や健康に配慮した要素が「あるかどうか」ではなく、自社が掲げる環境・健康に関する理念や方針に、それらの要素が「どこまで適合しているか」へと変化しつつあります。

EaSyGo Value Driverは、そうした企業に向けて、情報が分散しがちなビルの環境・健康配慮に関するスペックを整理・可視化し、自社にとって最適なビルとのマッチングを支援するツールです。

また、不動産オーナーに対しては、ビルの特性と相性の良いテナントの提案に加え、健康性やサステナビリティの特徴を整理したリーシング資料の作成をサポートし、より戦略的なテナント誘致と資産価値向上に貢献します。

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[1] ニューロダイバーシティの推進について, 経済産業省

[2,4] Thriving Workplaces: How Employers can Improve Productivity and Change Lives
INSIGHT REPORT JANUARY 2025
, World Economic Forum

[3] Planetary Health and Mental Health Nexus: Benefit of Environmental Management,Annals of Global Health  Boston College